ノーベル賞受賞 イギリス人作家の
ジョン ゴールズワージーの短編小説
「林檎の樹」 The Apple Tree
ノーベル賞受賞作品とはいえ
今ではあまり読まれなくなっている小説
初めて読んだ時は
胸が締め付けられるような結末に
号泣してしまったほどでした。
年月を経て今は作品に対する感じ方
視点が違っています。
当時の田舎育ちの何も身に着けてない女性が
ロンドンのアッパーミドル階層に
うまく馴染めたとは あまり思えません。
彼の仕打ちは残酷で思いやりがないものだったけれど
田舎娘が彼についてロンドンに行ったとしても
幸せになれたか どうかわからない
今なら そう思います。
現代なら話は別だけれど
当時のイギリスの身分格差、生活様式の差は大きかったのでは?
主人公は その点をトーキーに保養に来ていた旧友に諭されて
若気の至りでは済まない非道な仕打ちを彼女にし、
同階級の女性、旧友の妹と結婚してしまいます。
林檎の樹は二人の逢瀬の場所
小川の浅瀬にありました。
そんな場所 まるで想像できなったけれど
後年 イギリスではないところにもありました。
村はずれの森の奥、ゆるやかな丘の間を縫って流れる小川の途中に
ちいさな自然のプールがあり
幼い子を水遊びさせるのに絶好の場所
そこには古い苔むしたマリア様の円柱 ( Säule ) があり
Mariensäule マリエンゾイレと呼ばれていました。
聖母様の足元で幼子が遊ぶメルヘンな世界
マリア様の守護がある場所
林檎の樹はなく 代わりに菩提樹がありました。
その木陰から
浅瀬で水を跳ね返している子どもたちを見ながら
私は「林檎の樹」を想いました。
そんなところで 溺れるのは容易ではない
浅過ぎて身を沈めることが できないのだから
それほどまでの哀しみ
この小説の舞台は イギリスのTorquay トーキー 近くの村
トーキーにはジェイの墓があります。
林檎の樹のヒロインのように
捨てられて自殺した女性のお墓
昔 イギリスでは自殺者は共同墓地に入れず
十字路に埋葬されたとのだとか
ジェイの墓も十字路にあるそうです。
ジェイの墓には 毎日 新しい花が手向けられるけれど
誰が供えているのかはわからないという
余所者は蚊帳の外に置かれる ミステリーもあります。
ゴールワージーの「林檎の樹」
牧歌的な情景と哀しすぎる悲恋
主人公の男性の仕打ちに憤りを感じる小説ではあるものの
とても美しいストーリー
忘れられない一冊
この小説の舞台の林檎の樹の側に
マリア像が祀られていたら
もう少し違った結末もあったかもしれない
と想像してみるけれど
やはり初心な田舎娘の恋は実らないのでしょうか。
愛をこめて
感想 ありがとう 感謝