冬が来た Coldest Time 高村光太郎

冬が来た 

きつぱりと冬が来た 
八つ手の白い花も消え 
公孫樹いてふの木も箒ほうきになった 

きりきりともみ込むような冬が来た 
人にいやがられる冬 
草木に背そむかれ、虫類に逃げられる冬が来た 

冬よ 
僕に来い、僕に来い 
僕は冬の力、冬は僕の餌食ゑじきだ 

しみ透れ、つきぬけ 
火事を出せ、雪で埋めろ 
刃物のやうな冬が来た 

高村光太郎 「冬が来た」(詩集『道程』より

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

感想 ありがとう 感謝

コメントする

目次